今日の学習講師は、東北大学大学院文学研究科
教授 佐藤 弘夫 先生です。

先生には、明青大学習会において、数回に亘り講師をお願いしています。

  1. 平成28年12月 みちのくの仏たち
  2. 平成26年12月 慈覚大師の足跡~みちのくの古寺の伝説を読み解く~
  3. 平成25年 8月 幽霊の誕生
  4. 平成24年12月 仙台の歴史散歩~仙台以前の仙台を歩く

関連する学習を定期講座として講演を頂いています。

今日の学習テーマ 死者の花嫁について

『ムサカリ絵馬』

 山形の村山地方には、死者の結婚式として、人形ではなく、婚礼の光景を描いたムサカリ絵馬を奉納する風習があります。ムサカリとは、この地方の方言で結婚式という意味です。
絵馬には、花嫁と花婿のほか、仲人や近親者が描かれた絵柄があります。

1.黒鳥観音(山形県東根市)のムサカリ絵馬

  事故や病などで子供を失った家族たちは、あの世でも寂しくないように、絵や写真で架空の人物と婚儀の様子を描き、お寺に奉納し、故人の成仏や死後の幸せを祈る遺族の想いを絵馬に託しました。黒鳥観音堂では、壁や天井一面に巡礼札やムサカリ絵馬がぎっしりと飾られている。

2.川倉地蔵尊(青森県五所川原市)

  この地方では、死者の婚礼姿を奉納する風習がある。広い本堂には故人の冥福を祈るために奉納された、二千体の地蔵尊が祀られている。それぞれ化粧が施され、個性のある顔立ち、故人の形見の衣服を身に着けている。ここではムサカリ絵馬でなく、死亡した男性の写真と同じケースに花嫁姿人形が奉納されている。

3.若松寺(天童市)

  ムサカリ絵馬として、身内や家族が死後の世界でも、現世と変わらない生活や、家族団欒の絵馬が奉納さている。
 独身のまま、死の世界にめされた男性の横に、あの世での幸せを願い、花嫁が寄り添う絵馬や写真で奉納する風習があります。

4.常楽寺・供養絵額(遠野市)

  死後にみんなが集まり、死後の世界でも、ごく普通に生活し、団欒し、現世と変わらない姿が絵額に描かれ、奉納されていたり、明治維新の西南の役に出征、武運つたなく戦死された若人の軍服姿も奉納されている。

5.死者と出会う山

   三森山(鶴岡市)のモリ供養・光星寺(庄内町)・羽黒山(鶴岡市)
     山形県の庄内地方では、旧盆明けに死者と生者の交流の場となるモリ供養が行われます。
  参拝者は身近な物故者の想い出を胸に抱きながら、この山を訪れ、故人の偲びながら山道を辿り、さまざまな供養を行う風習がある。

そのほか【熊野観心十界身陀羅】・【阿弥陀仏のお迎え】・【餓鬼草紙】・【現世と他界の構図】・【死者の目線】等々、佐藤先生の独自視点からの講義と学習内容でした。

 東北地方ならではの風習。ムサカリ絵馬や、絵額、死者人形と花嫁姿に触れ合うことが出来、またどのお寺も普段は参拝者もなく、静かに死後の世界に触れる寺巡りはいかがでしょう。

佐藤 弘夫 先生の著書
【死者の花嫁】
【春の消息】(佐藤弘夫・直木賞作家 柳 美里 共著)