11/10 スペイン風邪世界的に流行(1918年パンデミック)

「スペイン風邪」とは約 100 年前1918~1920年(大正7~9年)頃に世界中で感染者を発生させたパンデミックで原因は新型インフルエンザ(H1N1)の世界的流行である。「未知の感染症」としてのスペイン風邪が細菌ではなくウイルスと特定されたのは流行から10年以上経過後であった。

本日は文化歴史学がご専門で東北大学災害科学国際研究所准教授の川内敦史先生からスペイン風邪はいつ、どこで始まったのか?スペイン風邪拡大の原因は?日本における流行状況や日本のスペイン風邪流行の特徴など、20世紀最初のパンデミック(世界的流行)で、現在の新型コロナ(COVID-19)の10倍以上の死者を出したが激動の20世紀に埋没して「忘れられたパンデミック」についてお話を頂きました。


講師紹介

東北大学災害科学国際研究所准教授 川内 敦史(カワウチ アツシ)先生

 専門:日本近現代史(地域医療史・地域社会史・東北地方の近現代史

関西学院大学文学研究科文化歴史学専攻 修了  博士(歴史学)平成24年3月
神戸大学大学院人文学研究科 特命講師 (平成27年5月~平成30年9月)
東北大学災害科学国際研究所 准教授 (平成30年10月~現在)
NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク 事務局長 (令和3年7月~現在)


1. 「スペイン風邪」とは?

 いつ、どこで始まったのか?
1918~1920年(大正7~9年)頃に世界中で感染者を発生させたパンデミックで原因は新型インフルエンザ
(H1N1)の世界的流行である。1918年3月アメリカ陸軍のカンザス州基地内で発生し、
その後フランス北部の港町エタプル、イギリス軍の陸軍基地で流行。
発生源は鳥で鳥インフルエンザが豚を介して人へ伝播し人から人へと伝染した。
渡り鳥がウイルスを運び動物を介して人へ伝播し、大量の人間が移動(ヨーロッパ戦線に参戦)
した事で感染拡大。
現在のコロナ(COVID-19)も同様に動物から人への伝染である。
「未知の感染症」として「スペイン風邪」のウイルス特定は流行から10年以上経過後の1931年
(昭和6年)に解明されインフルエンザは細菌ではなくウイルスが原因と判明した。
第一次世界大戦や日本における関東大震災発生などで、激動の20世紀に埋没し「スペイン風邪」
は忘れられたパンデミックになり歴史の教科書にもでていない。

2. スペイン風邪の猛威

■ スペイン風邪の流行状況について

1918年3月にアメリカの陸軍基地で発生後、第一次世界大戦に参戦する多くの米兵がヨーロッパに 渡り1918年4月からヨーロッパ戦線で流行が拡大したが感染拡大は秘匿された。その後数か月で 世界中に流行(パンデミック第一波) 日本のパンデミック第一波伝播は1918年4~5月頃で、1918年8月後半世界3港湾都市で同時感染爆発し より強いウイルスに変異して世界中に変異ウイルスが伝播(パンデミック第二波) 1918年9~10月 日本国内でスペイン風邪が本格的流行、1919年1月オーストラリアで1万2千人以上 の死者が発生して米国や欧州にも感染の波が到達した(パンデミック第三波)

■ 日本の流行状況
1918年春に第一波の伝播(限定的な流行)があり、9~10月にかけて全国的に流行しスペイン風邪の
本格的流行開始。
1918年秋~1919年1月末にかけて1千900万人以上が感染(内地人口の3割以上)
死亡者は1919年4月迄に25万人以上で致死率は約1.4%に達した。
後流行として1920年1月陸軍第二師団(仙台)でクラスターが発生し市中へと拡大し1月下旬には
全国で最も流行の激しい地域になった。

3. 日本の「スペイン風邪」流行の特徴


■ なぜ日本の死亡率が低かったのか?(今後の研究が必要)
世界的に見て日本での死亡率が低かった理由として、マスクとか手洗い等、日本文化の中に従前から
意識しなくても取り込まれており、日常生活の中で常態化していた日本文化に埋め込まれていた
「ケガレ」の思想/日常的なライフスタイル/「公徳心」に基ずく習慣である。
COVID-19の時代に考える「スペイン風邪」の経験から終わらないパンデミックはない!
ウイズコロナの時代をどう生きるかであると講演を締めくくられました。

  ※本日の学習会から全員参加を実施し、出席者は 457 名でした。