11/27 高齢期のこころの魅力

私たちのこころの魅力ってなんだろう? 、こころの問題とは…?、シニア世代の”こころ”について臨床心理学を中心に発達心理学・健康心理学などの観点から、元東北福祉大学教授で臨床心理士の菊池陽子先生に講演いただきました。

講師紹介

元東北福祉大学 総合福祉学部福祉心理学科教授 菊池 陽子(きくち ようこ)先生

昭和55年 東北大学大学院 教育学研究科 教育心理学専攻 博士課程修了
昭和58年 仙台市デイケアセンター心理相談員
平成05年 仙台市立病院 神経精神科臨床心理士
平成18年 東北福祉大学総合福祉学部 福祉心理学科 准教授
平成20年 東北福祉大学せんだんホスピタル 臨床心理室室長 兼務
平成27年 東北福祉大学総合福祉学部 福祉心理学科 教授
令和04年 東北福祉大学 非常勤講師
令和06年~ 仙台市医師会看護専門学校 非常勤講師など

 

1. こころのはたらき(生涯発達心理学から)

  • 心理学の研究は、児童期・青年期・中年期・老年期とそれぞれの年代別に研究されてきたが、20世紀末にバルテスが「生涯発達心理学」としてまとめる。
  • 知 能:知能は10代の初めで大人と同様になる。知能の4つの能力のうち、言語理解とワーキングメモリーは高齢化しても低下しないが、知覚推理と処理速度は年齢と共に低下する傾向。
  • 知 恵:知恵は大人の思考様式。上昇・低下は年齢には関係なく、日常の過ごし方、幸福感、人生の需要に関係する。ただし、ボーッと生活していてはダメ!
  • 記 憶:記憶には感覚記憶・短期記憶・長期記憶があり、貯蔵庫が異なる。種類により加齢の影響が異なり、短期記憶は努力しないと消失し長期記憶は半永久的。短期記憶は1回に7個程度なので、それ以上はメモを取る習慣を。

2. かがやき増す高齢期(こころは発達を続ける)

  • 幸福感:高齢者は主観的幸福感が高い。身体的機能が低下してもこころは幸福! なぜ?
    ①年をとるにつれて心理的に適応し、ポジティブな感情を高めるから【社会情動的選択性理論】
    ②「獲得と喪失」の相互作用→高齢者は自分の境遇に合うように行動や考え方を変えて幸福感を保つから【補償を伴う選択的最適化理論(バルテス)】
  • 健康感:健康度自己評価→高齢になるほど「非常に健康だと思う」と回答。人にはそれぞれの健康感がある。

3. こころの光と影(発達課題と危機)

  • 発達には課題がある→高齢期の課題は、「統合か絶望」という危機(葛藤)をどう乗り越えるか?
    この課題を乗り越えると、人生最大の宝である「英知」という徳を得ることができる。
  • エリクソンは統合感が大事としているが、講師の菊池先生は「人生まとまりすぎても窮屈なので、ほどよくまとまるのが良い」と考える。

4. こころの魅力 ~ 塩梅(あんばい)のよさ

  • こころはどこにあるかわからない。広辞苑で””を”うら”とも読むように、おもてに見えないうら側にもこころは存在する。むしろ、うら側にあるこころのほうが多くを占める。うら悲しい、うら若い、うらやましい、裏通り…といった言葉は、心=うら の関係。
  • 絵本『ぱっくんおおかみとお化けたち』は、おおかみとおばけが闇と光に翻弄される話で、菊池先生の大好きな絵本。
  • 防衛機制:苦痛な出来事、恥ずかしい出来事などがあった時、私たちは四苦八苦しながら無意識に心の中(うら)で処理をしている。これは、こころが傷つかない様に誰でも使っている適応機制。

★ まとめにかえて ~ こころの魅力とは ~

☆ 高齢期のこころの魅力は「光と影」、「表と裏」のかねあいが ”いい塩梅” になってくることかもしれない …

「皆さんの今のこころの魅力はどうですか?」と講演を結ばれました。

 

★本日の学習会の出席者は528名でした。