2/9 古墳時代の王者はどんな人

本日の学習会は東北学院大学文学部教授 辻 秀人 先生、50年間に亘る考古学を調査・研究された専門家で「古墳時代の王者はどんな人」をテーマに直近7年間かけて発掘調査した「喜多方市灰塚山古墳」の調査と研究成果を多くの映像を使い熱弁され、会場は先生の話に引き込まれました。

講師紹介   辻 秀人(つじ ひでと)先生

略 歴
昭和 49年 3月 東北大学文学部卒業 考古学専攻                                          
昭和 55年 3月 東北大学大学院文学研究科博士課程修了
昭和 61年 4月 福島県立博物館学芸員
平成 4年 4月 東北学院大学文学部助教授
平成 10年4月~ 東北学院大学文学部教授

1.古墳時代とは

①3世紀後半から6世紀頃
日本列島の多くの地域で前方後円墳を築いた時代➡人々を納める王者の時代
大和王権が形成され、多くの人を支配した仁徳天皇陵が大阪府堺市に、巨大な前方後円墳がある。


 ②宮城県の大型古墳
・仙台市遠見塚古墳 前方後円墳 全長110m➡発掘調査で2つの棺が埋葬されていた
・名取市雷神山古墳 前方後円墳 全長168m➡東北最大の古墳
・名取市飯野塚古墳群 40~50mの前方後円墳 5基

 2.喜多方市灰塚山古墳の発掘調査

①前方後円墳の見つけ方及び当該古墳の発掘前と発掘初期状態
・前方後円墳は高い所が平らな円形で、少し下がったところにも平らな形状がある
・灰塚山古墳は熊が出るような山の中にあり、2011年より7年間の発掘調査を実施
東北学院の学生を含む調査隊、辻先生が陣頭指揮で発掘作業、調査、研究を重ねる
・伊達政宗時代は疫病等を供養する供養場所、痕跡の石発見➡この地が保存されていた
・発掘調査は第1主体部と第2主体部に分けて行われた 

②第1主体部の発掘調査
・長さ8mを超える長大な木管痕跡、幅1.6mは最大規模、組み合わせ式木簡➡当時の舟の形
・青銅製の鏡(小型仿製鏡)、ガラス製腕飾り、堅櫛群、太刀が出土
・堅櫛群は大型と小型を組み合わせた葬送の道具で順番に遺体の上に供献
・副葬品には太刀を除いて武器が無く、女性が埋葬された可能性
・第1主体部の時期は遺物群の様相から5世紀前半~中頃と推定

 ③第2主体部の発掘調査
・石棺は粘土で密封、石組み遺構で覆われた特徴的な構造
・蓋石上で発見された沢山の武器、武具は死者に供献されたもの
・棺内にも武器、人骨が保存状態良い状況で発見、人骨からも男性の可能性
・第2主体部は5世紀後半の時期、男女共に会津盆地の中心を支配していた勢力と考えられる

④人骨の発見
・第2主体部の石棺からほぼ全身の骨を発見
・比較的老齢の男性で脊椎に癒着がある
・古墳時代の前期、後期を通じて大型古墳で被葬者の全身骨が出土、東北地方では類例がない

⑤人骨を各種分析で分かったこと
・DNA分析(ミトコンドリアDNA)
縄文人の特性がみられず、西日本古墳時代人や現代人に近い(渡来人)
・安定同位体分析
米を食べており、比較的淡水魚類を多く食べている(一般庶民と食生活違う)
・人類学的所見
華奢な体系、歯のすり減り少ない➡余り重労働していない、柔らかいもの食べていた
比較的高齢な男性、脊椎の癒着あり(腰痛もち)、推定身長158.3cm程度

 まとめのお話しと共に復元した人物モデルの動画が紹介され、更に意欲的に考古学の研究調査を
される意気込みを示されました。遠い先祖の歩みを知る貴重な学習会になりました。

本日の学習会参加者は398名でした。