3/23 記念講演 『伊達政宗の具足』
講 師 仙台市博物館 副館長 高橋 あけみ 先生 1.重要文化財 黒漆五枚胴具足 伊達政宗所用 仙台市博物館蔵 について ・この具足の特徴・・兜は62間筋兜。草摺は9間6段下がりで全体で21.2㎏あり(元は岩出山伊達家のもの) 質実剛健、合理的、鉄砲の時代、当世具足、仙台胴の基本形弦月前立て ・作者はだれか・・ 兜は明珍系「宗久」62間筋兜 胴(銘なし)仙台胴、雪下胴ともいう。(会津芦名氏お抱えの職人か?) ・岩出山伊達家文書からわかったこと ① 4代綱村の頃、仙台伊達家には伊達政宗の具足はなかった。 ② 岩出山伊達家の祖・伊達宗康(政宗の四男)が寛永6,7年頃(1629、1630頃)に 政宗から拝領していた具足を、延宝7年(1679)献上 ③ 政宗が大坂の陣(冬・夏とも)慶長19年、20年(1614,1615)で着用の伝承 ・文化11年(1815) 仙台伊達家で修理
2. 複数ある(伝) 伊達政宗のよろいかぶと ① 紫糸威胴丸 伊達政宗所用・湯村福幸拝領 仙台市博物館蔵 片倉景綱の家臣湯村福幸が、天正17年(1589)摺上原合戦で功績があり、 政宗から若年時使用の鎧を拝領。(室町時代の胴丸) ② 黒漆五枚胴具足 伊達政宗所用 瑞鳳殿埋納 昭和49年瑞鳳殿の発掘調査があり文箱、兜、太刀、鎧、他が副葬されていた。 兜は62間筋兜。弦月前立の痕跡あり。胴の草摺は③より1間多く10間6段下がり。 調査後埋め戻された。 「貞山公治家記録」では、天正13年(1586年)11月の人取橋合戦の際着用の具足。 ③ 重要文化財 黒漆五枚胴具足 伊達政宗所用 仙台市博物館蔵 ④ 仙台市指定文化財 黒漆五枚胴具足 伊達政宗所用・菅野重成拝領 仙台市博物館蔵 「伊達世臣家譜」に記載あり。兜は32間筋兜。胴のフォルムはやや丸い 着やすさを求め、五枚胴にした。(実際は複数のパーツで構成) 人取橋の合戦で着用したとされるが弾の跡が見当たらない。 ⑤ 黒漆五枚胴具足 伝伊達政宗所用 駒形神社蔵 ⑥ 色々胴威胴丸 伝伊達政宗所用 メトロポリタン美術館蔵
【付録 1 】 豪華な菅野重成の拝領品 すべて伊達政宗所用
(菅野家の長持ちに収蔵されていたもので仙台市博物館に寄贈) ・白絹縮地雪薄紋単衣・・夏の衣料。湯上り、夕涼みに最適。絹製。雪薄紋の古い例 ・黒羅背板地胴服・・舶来の毛織物。羅背板は羅紗より生地が薄い。いわゆるダブル巾の 布で前身頃から後ろの身頃まで一続き ・納戸緞子地雲文袴・・ 納戸色は緑がかった暗い青色。緞子は光沢ある文様織地 ・水牛製胴乱、べっ甲製口薬入れ・・どちらも火縄銃の火薬入れ
3. 前立てのこと
・細い月の前立てはいつから?
永禄10年(1567)政宗誕生の記録「性山公治家記録」
旗は日輪、兜の前立ては半月
・「黒漆解胴(ほどきどう)の御具足に明珍の御兜、黒半月の御立物」
(「貞山公治家記録」元和元年(1615)5/6条 大阪夏の陣)
・満月ではない月は半月?
・弦月は半月のこと「弦月:上弦または下弦の月。弓張り月」
・黒い細い月の前立は現存するのか
・政宗以外の藩主は細い月の前立てを使用しなかったのか
昭和3年の写真によれば1~5代まで細い半月であった
4. ダースベイダーの噂 STAR WARS-THE MAGIC OF MYTH-(1997)には④(菅野重成拝領具足)が掲載されているが ...(伊達政宗所用具足を含む) 当世具足をモデルにしたのでは? 【付録 2 】 伊達政宗の愛刀「鎺(はばき)国行」 目赤の鶴とそれを獲った鷹を政宗が秀吉に贈る プレゼントありがとう お返しに「太刀一腰 鎺(はばき)国行」 モノと文書が一緒に伝来するのが大名道具収蔵館の醍醐味
結びにかえて
・まだまだ研究は続きます
・現在、仙台市博物館は休館中(令和6年3月末まで)
・令和4年秋、福岡市博物館で「重要文化財 黒漆五枚胴具足 伊達政宗所用」展示予定
・令和6年4月、仙台市博物館リニューアルオープンをお楽しみに!
本日の受講者数は88名でした。