10/11 白沢カルデラの生い立ち ー仙台大地の歴史2000万年ー

   本日の学習は「白沢カルデラの生い立ち」と題し、東北大学・総合学術博物館長 高嶋 礼詩教授を講師に迎え、仙台大地の歴史2000万年の歴史をとおし、白沢カルデラがどのようになっていったか。仙台周辺の大地がどのようにして形成されたかについて講演をいただきました。

講師紹介
  東北大学総合学術博物館 教授、館長
    髙嶋 礼詩 (タカシマ レイシ)先生


平成  3年  4月 東北大学理学部地学系 入学

平成12年 
3月 東北大学大学院理学研究科博士後期課程 修了
平成20年  6月 北海道大学創成研究機構 特任助教
令和 2年10月 東北大学 学術資源研究公開センター
あああああああaああああああああああ総合学術博物館 教授

1. 地層から大地の歴史を読み解く

   地層は異なる種類の岩石が積み重なることにより縞状になっている。個々の地層がどのような環境で、いつできたのかを調査することでその地域の地層を作った大地を読み解くことができる。

(1)どうやって地層のできた場所や環境がわかるのか
地層の岩石の種類により、どのような堆積環境だったのか、また、どのような火山噴火が起こったのかを明らかにすることができる。また、海底に住む有孔虫は、水深によりすみ分けをしており、その化石を調べることにより、地層ができた当時の海洋環境も知ることができる

2. 仙台周辺の地層の概念

 仙台周辺の地層は、2000万年前の古い地層から現在の仙台の大地が出来た地層の時代までを5つの時代に分けることができる。

(1)日本海拡大と海底・陸上噴火の時代(東北日本火だるま):2000~1600万年前
太平洋プレートが東に移動することにより、日本列島がアジア大陸から分離し、日本海が形成された。この時期、東北地方では、海底・陸上噴火において活発な火山活動が起き、火だるまの状態であった。

・ グリーンタフ型温泉
 日本海形成に関連した海底の火山活動は、グリーンタフに伴われる金属鉱床を作り出した。
 2000万年前の海水に含まれているイオンが石の隙間にたくさんのグリーンタフが含まれており、宮城県の奥羽山脈近傍では、グリーンタフに由来する成分を多く含むタイプの温泉が多い。

(2)東北日本沈没の時代(東北地方の水没):1600~800万年前
東北地方の地盤が冷却・収縮して、全体が沈降し、東北地方の大部分が海底下に水没した時代
 奥羽山脈や作並付近は1000~2000メートルの水深で物凄く深い海であった。この時代の仙台周辺では、強い海流の下で形成した砂岩層が見られる。

(3)カルデラ噴火の時代(東北日本・火山灰と穴だらけ):800~600万年前
東北地方はあちこちにたくさんのカルデラができ、火山灰と穴だらけになった時代。水没していた東北地方の大部分が陸地となり、今とほぼ同じ姿となる。
東北地方の各地で、巨大噴火が起こり、多数のカルデラができた。その一つが直径20キロメートルの白沢カルデラである。この白沢カルデラのカルデラ湖は、古仙台湖と言われている。 カルデラの周辺にできた溶岩ドームや成層火山が、現在の権現杜、蕃山、太白山の原型。
 ※カルデラとは、火山噴火によってできた巨大な凹地。穴の直径は2kmから100kmにおよぶ。

(4)海水準変動の影響による地層(水没・干上がり繰り返し時代):600~250万年前
 温暖・寒冷のサイクルによって、海水面が上がったり下がったりし、2回ほど東北地方の低地帯が海の底に沈んでしまうということが起きた時代。水没範囲は福島県沿岸部から花巻まで内湾化し、海水が侵入していた。竜の口のクジラやイルカの化石は、この時代のものである。

(5)奥羽山脈隆起と成層火山の形成:250万年前~現在
奥羽山脈ができ上がり、蔵王山のような成層火山体が多く形成された時代
フィリピンプレートの移動方向の変化に伴い、太平洋プレートが東西に強く圧縮するようになった、これにより東北地方では南北に延びる断層が活動し、奥羽山脈が隆起した。これらの断層上に沿って温泉が点在している。

おわりに

  2000万年前からの地層を知ることにより、作並付近では水深1000メートルの深い海の時代(中新世中期)があったり、仙台から岩手にかけての北上低地帯が海に覆われた時代(鮮新世前期)もあった。竜の口渓谷から産出するクジラやイルカの化石は後者の鮮新世のものである。また奥羽山脈の隆起に関連する断層上に沿って温泉があることなど、仙台の大地の変化を知る有意義な講演となりました。

  《本日の学習会出席者は495人でした》

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